カテゴリー「福島原発事故」の6件の記事

2011年4月 9日 (土)

H16での原子力災害対応ロボットに対する国の見方

平成16 年7 月原子力安全委員会原子力安全研究専門部会が「原子力の重点安全研究計画」に関する意見について(回答) 」として、パブリックコメントに対して以下を示している。
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http://www.nsc.go.jp/kenkyu/h1607.pdf

【意見 No.1】
[意見](木村 哲也 氏)
無事故=リスク0という幻想から離れ現実的なリスク管理を進めるべき。
近年急速に発達しているロボット技術の応用で、効率的な通常の監視体制
(自動巡回監視ロボット等)と、万が一の事故の場合でも早急に効率的な対応
な体制(遠隔操縦ロボットによる事故復旧)の確立が可能と考える。
当方は文部科学省で進められているレスキューロボット開発プロジェクト
(http://www.rescuesystem.org)に参加しているが、既に基礎技術は確立さ
れている。JCO事故後の事故対応ロボットの継続的発展の考慮をされたい
(ロボット自体は上記プロジェクトで利用中)。昨今のロボットに対する好意
的世論からすると「万が一の場合にもロボットで対応可能」との体制作成は、
住民の合意形成にも役立つと考えられる。

[回答]
原子力施設の防災対策については、平成11年のJCO臨界事故を踏まえ、原
子力災害特別措置法が制定されるなど、政府の対策の抜本的強化がなされていま
す。原子力安全委員会としても防災対策の内容をより実効性のあるものにするた
め、「原子力発電所周辺の防災対策について」を改訂し、新たな指針として平成
12年に「原子力施設等の防災対策について」を策定するなど、必要な取り組み
を行っています。
本計画においても原子力防災分野は、重点分野のひとつとして取り上げており、
「原子力安全委員会及び規制行政庁においては、原子力災害時における国民の安
全確保の実効性を高めるため、緊急時に適切な対応が取れるようにするとともに
防災対策を一層充実する必要がある。」旨記述しています。
ご指摘の事故対応ロボットの開発については、JCO臨界事故を踏まえ、研究
機関等でロボットの開発が進められました。今回の「原子力の重点安全研究計画」
が主として安全規制の面から策定したものであるため、それを具体的な項目とし
て記載していませんが、原子力安全委員会としても防災対応のための遠隔操作ロ
ボット等の開発の重要性は認識しており、こうした技術が確立し、原子力防災に
おいて利用可能になることは非常に望ましいと考えています。
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福島原発後の報道で原子力関係者から「事故対応ロボット開発は考えた事は無い」との
意見がみられるが、この時点で、この部会が、このレベルでの開発の重要性は認識していた
との情報は、今後の原子力安全技術開発が適切に行われるためには、理解しておくべきであろう。

2011年4月 8日 (金)

原子力安全・保安院の独立性

コンピュータ制御安全に関する国際安全規格IEC61508-1(JIS C 0508-1)8章では、安全性をチェックする団体の独立性を、被害のひどさに応じて表のように示している。NR:Not Required(推奨されない), HR:Highly Required(強く推奨する)。放射能漏れにより多数の死亡が予想される原発の安全性チェックでは、独立した組織でのチェックが必要となる。
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原子力安全・保安院は経済産業省管轄。経済産業省は、原子力を推進する側の官庁。保安院に、経済産業省内の原発推進部局に関係ある人間はいるのか?メーカーからの出向者はいるのか? 経済産業省内で保安院を、安全のチェック団体と言うからには、その独立性を説明してもらわないと困る。ネットをあさっても、独立性を明確に説明する情報には行きあたらない。

内閣府にある原子力安全委員会は、独立団体と考えられるが、原発メーカー、保安院と対等に安全を議論できるマンパワーはあるのか?

独立性のない機関によるチェックは、安全性のチェック上、チェックしたとはみなされない。保安院の独立性が十分でなければ、それは、安全規制の「お手盛り」を招くことは十分予想される。今後の情報に注目。

2011年4月 7日 (木)

中越沖地震でのIAEA柏崎原発レポート

IAEA, “PRELIMINARY FINDINGS AND LESSONS LEARNED FROM THE 16 JULY 2007 EARTHQUAKE AT KASHIWAZAKI-KARIWA NPP” REPORT TO THE GOVERNMENT OF JAPAN, 2007

http://www.iaea.org/newscenter/news/2007/kashiwazaki-kariwa_report.html

 

2007年の中越沖地震で被災した柏崎原発に対し、地震発生直後に日本政府に提出されたIAEA調査報告書では、以下の項目が「主要な発見と教訓」の章で個別事例としてとり上げられている(注:報告書より著者が要約)。

1)観測された地震動が設計時の地震動より過大であった。安全率を見た設計により重大事故にはならなかったが、適切な安全率を決定する体系的アプローチが必要である。

2)地震によりどのような被害が生じるか、確定的・確率的アセスメントにより被害の再評価が必要である。

3)外部からの供給電源は停止せず現在の基準は余裕があると考えられるが、今後は詳細な検討が必要である。

4)複数の配管が同時に外れるなど、地震に起因する共通原因故障の考慮が必要である。

5)火災も地震に起因する共通原因故障として考慮が必要である。

6)地震により生じる物の落下、漏水等が各機器にどのような相互作用を与えるか考慮すべきである。これは、設計、建設、保守の全フェーズで考慮が必要である。

7)地盤の破壊を考慮すべきである。

8)基礎と固定の破壊を考慮すべきである。

9)反応炉の安全に関してマネジメントは全て適切に行われた。しかし、放射能漏れの規制当局への報告が遅れた。外部の緊急対応機関に放射能漏れ情報を迅速に報告するためには、一貫したコミュニケーションとモニタリングシステムが重要である。

10)2件の少量の放射能漏れが観測された。これらの原因は原発事業者により十分理解されている。

東京電力はマスコミ業界にとって、広告宣伝の大口顧客。この内容、当時のマスコミにどのくらい取り上げられたのでしょうか。

 

「想定外」を言い訳にしない努力を

M9.0という「想定外」の大地震が2011年3月11日に東北関東沖で発生し、死者・行方不明者約3万人(2010年3月末現在)という未曾有の被害が生じた。地震による津波が被害を拡大し、特に福島原発では津波による浸水で燃料の冷却機能が正常に作動せず、水素ガス爆発、放射性物質の拡散など地震後の二次被害も発生し、「決死隊」による必死の冷却作業も行われている。筆者の専門は機械安全であり原子力安全ではないが、この大きな教訓から機械安全技術者が学ぶべき事を考えてみたい。

 [地震津波被害と共通原因故障]

 機械安全では安全装置を多重化する場合、共通原因故障の有無に注目する。共通原因故障の典型的な例は温度上昇による電気電子回路の異常動作である。共通原因故障が生じる場合は、いくら多重化していたとしても単一故障として安全設計を行う(安全性を低く評価する)ことが制御安全規格ISO13849-1:1999に示されており、同規格の2007年版では共通原因故障の割合が制御系の安全性指標Performance Levelに明示的に取り入れられている。共通原因故障への対応では、単純な多重化でなく、異なる技術(電気と空気圧等)を用いて多重化する異種冗長性(ダイバーシティ)の利用が推奨される。

 原発安全は「止める、冷やす、閉じ込める」を多重化して守っているが、福島原発ではその多くを電気に頼っている。大地震が起これば津波が発生する事は自明であり、電気にのみ安全を頼るなら、電源系の津波対策は「複数の電源が有るから多重系」と単純に考えるのでなく「複数の電源があるが、津波被害という共通原因故障を十分考慮した上で、多重系」と考えるべきであろう。異種冗長系の考えを取り入れるならば、重力による注水、蒸気圧による注水等も考えられる。

[事故発生後の対応の設計者責任]

 機械安全では、事故が発生した場合に作業者を機械から救出するための手段(例:装置の逆転、手動での動作等)を、機械の設計段階から考慮すべきとされている(機械の安全設計原則ISO 12100-2:20035.5.3 捕そく(捉)された人の脱出及び救助のための方策」参照)。すなわち、事故の発生後の対策を考える事は、機械の設計者責任の一部となっている。

 福島原発では事故発生後、炉心の詳細な情報を確認するためだけに原子炉に近い中央制御室に被爆覚悟で作業員が出入りしているという(遠隔モニタリングは難しいのだろうか?)。また、原子炉冷却のための放水が、ヘリコプター、機動隊の放水車、消防の放水車、建築機械(高所コンクリート圧送車)と次々と変わっている(事前に最適なものを検討していなかったのだろうか?)。また放水のための取水作業で、当初消防は消防車のみ利用して海からホースを伸ばす予定であったが、予定以上にガレキが多く、放射能環境下での人力でのホース延長作業が併用となった(事前にガレキ作業状の把握はできなかったのだろうか?)。これらの東京電力の対応を見ていると、事故の発生を前提にした事故発生後の対策を事前に十分行っていたのか、疑念を生ずる。

: IAEAの2009年度年報のsafety and security 章の最初の項目は、事故への準備と対応であることも、注目しておくべきであろう。

 紙面の都合で限られた視点であるが、福島原発からの教訓を考えてみた。絶対安全という神話のもとに普及が計られた原発では、事故を想定する事自体が悪とするような風潮が有ると感じている。筆者の専門とする災害対応ロボット技術の原子力災害への応用を昔、原子力関係者に打診したところ「原子力は絶対安全だから、災害対応ロボットの開発は不要」と言われた経験がある。一方、原子力大国のフランスでは、独自に原子力災害対応ロボットを開発しており、福島原発事故対応への貸し出しも申し出ている。

 「想定外」だから対応しないのではなく、すこしでも想定外を想定する努力を安全技術者は続けるべきではないか。この努力はコスト削減の強い圧力に会うが、安全技術者としてどの程度まで想定すべきか、主体的な判断が求められる。なぜなら安全技術者の努力により、「想定外」の状況での「決死隊」を少しでも減らせるはずだからである。

2011年3月16日 (水)

東海村JCO事故後の原子炉災害対応ロボット

東海村JCO事故後に、原子炉災害対応ロボットが1台*億円で開発され、マスコミにお披露目されたはず。ロボットにより、社員に決死の作業をさせません、との趣旨だった記憶が。福島原発事故、また、社員に決死の作業をさせている。あのロボットは、言い訳のためだけだったのか。あのロボットは、なぜ今回出ないのか。今のロボット技術、JCO事故当時より、格段の進歩有り。日本の全力、全技術を挙げての原子炉災害防止に期待と祈り。

共通原因故障

国際安全規格では共通原因故障(Common Cause Failure)の割合で、安全性を判断します。ISO 13849-1:2006に詳しいです。一般機器では、電気製品での温度をパラメータとした場合です(温度が上がると、複数の部品が一度に壊れだす)。CCFの割合が高いと、安全性は低いと判定されます。大きな地震が起きると、海岸沿いでは津波が起きる、余震が起きる。これはCCFでは。福島原発ではCCFが十分考慮されていたのか、今後の原因究明に注目したいです。