カテゴリー「学問・資格」の5件の記事

2011年1月28日 (金)

ドラッガー

現在、ドラッガー氏の「経営者の条件」を呼んでいます。「利益は未来から来るのに、人は過去の事に多くの時間を費やしている」「捨てることには努力が必要」「細切れな時間は何も生まない。創造的な仕事にはまとまった時間が必要だ。時間を作ることに努力せよ」。いずれもグサッとくる言葉です。忙しいのを言い訳に、創造的仕事をしていない自分を反省。CSRと企業の持続的発展に言及したドラッカー氏の著書を読んで「最近、CSRよく言われているからなぁ」と思ったら50年前の著書で、これまたびっくり。何ちゃってエクゼクテブ状態になっている自分にとって、「マネジメントを発明した男」といわれるドラッガー氏から学ぶことは多い。

2011年1月 9日 (日)

ドイツの職業教育

「ドイツ職人が作った**です」といわれると、何となく、良いものな気がしませんか? ドイツの職業教育は、世界的に見ても高い評価を受けており(例:UNESCO本部はパリだが、UNESCOの職業教育部門UNEVOCはボン)、その制度の一端を紹介します。調査したのは、2004年ぐらいなので、今としては情報が古いかもしれないので、注意してください。

ドイツの職業教育の基盤は「デュアルシステム」と言われる考え方で、これは、座学と実学をバランスよく実施するシステムです。ここでの実学は、日本で行われている単なる体験だけのインターンシップとことなり、実際の現場をじっくり学ぶ、本当の意味での実学です。

ドイツでは、ソーセージ職人など、手で稼ぐ分野で職を得ようとする若者は、高校時代にベルーフスシューレ(Berufsschule, 職業学校) に通う事になります。ベルーフスシューレでは、週のうち半分を実際の職場に行って技能の教育を受け、残りの半分をベルーフスシューレで関連知識の教育を受けることになります。ベルーフスシューレでは、座学だけでなく、実際に職場で用いる機器を利用して、より知識の理解を深めように工夫しています。私の訪問したベルーフスシューレでは、NC 工作機械
の他、簡単な生産ラインがあり、工場で働く若者が実際に物を作りながら、知識の習得に努めていました。

デュアルシステムで職場での教育に責任を持つのがマイスターです。ドイツにおいてマイスターの資格を有する技術者は、単に高度な技術を有していれば良いのではく、マイスターの資格を得るためには、次の3 つの段階を経て資格を習得していきます。1)レーリング(Lehring, 見習い)→ 2)ゲゼレ(Geselle、職人)→3) マイスター(Meister, 親方)。デュアルシステムでは、マイスターはレーリングをゲゼレにする教育に責任を持つ。マイスターになるためにはゲゼレの資格習得後、マイスターシューレ(Meisterschule, マイスター学校) に一定期間(2 年程度) 通い準備をして、マイスターの試験に受かる必要があります。ゲゼレは社会人ですから、マイスターシューレへは平日夜間や休日に通うことになり、時間的、精神的、費用的にも大変厳しいそうです。ドイツではマイスターの資格がないと店の責任者(店長) になれないため、店の跡継ぎとされる若者は、それこそ必死になってマイスターの資格習得に励むそうです。

マイスターの教育は次の4 つの柱からなります:1. 特殊技能、2. 経営、法律、3. 社会学、4. 教育手法。特に注目したいのは、教育手法の習得もマイスターの要件とされている点です。この点は、マイスターがドイツ社会で社会のリーダーとして高い尊敬を得ている一因にもなっているようです。日本の職業教育のインターンシップで、受け入れ企業に教育ノウハウがなく、学校と企業の連携が上手く行かなかった、との例を聞いた事がありますが、マイスター制度ではそのような問題点も、考慮しながらの制度設計となっています。ちなみに、どの程度マイスターの地位が高いかドイツの知人に聞いてみたところ「ドイツの高級車の顧客リストにはマイスターの名前がならんでいるが、あなたのような大学教官は、そのリストに入るのは難しいだろう。」との返答でした。

ドイツの新しい職業教育システムに、ベルーフスアカデミーというのがあります。ドイツの高等教育機関は、大学(Universitaet)と専門大学(Fachhochschule, FH と以下略記) があります。前者が博士養成まで担当するのに対し、後者は実務をより重視した内容となっています。その違いにより、専門大学卒業資格では、ドイツでは博士課程に入学はできないことになっています(EU統合で、このような区別はできなくなって、ちょっと困っていると聞いたけど、今はどうなんだろ)。この大学と専門大学に加え、近年、ベルーフスアカデミー(職業アカデミー、Berufsakademie、BA と略記)という新構想大学がバーデンビュルッテンベルグ州で開学されています。BA は次の特徴を持っています。
• 入学にはアビテュア(Abitur, ドイツ大学入学資格) と訓練企業との契約(学生が個別に交渉。企業リストはBA のホームページに掲載) が必要
• BA 在学中は訓練企業に雇用される形になり、協力企業から給料がもらえる。
• 訓練企業で3ヶ月働き、その後、BA にて3ヶ月の学習、を繰り返す。
• FH の卒業資格(通常5 年必要) と同等の資格を3 年で習得できる
また、その歴史は下記のようになっている。
• 1972 年: 民間企業と政府機関によりBA の構想がスタート
• 1974 年: BA 設立。60 の訓練企業の下で160 人が学生として入学。(現在は1400 の訓練企業と16000 人の学生)
• 1982 年: 同州で、BA の卒業資格は大学、FH と同じ扱いにする法律を制定。
• 1994 年: 同州の要請により、ドイツの資格審査機関” Deutscher Wissenschaftsrat”がBA を審査し、BA卒業生の能力はFH 卒業生と同等であるとの結果を公表。
• 1998: BA の卒業資格(Diplom(BA)) は、大学, FHで得た卒業資格と同等であるとヨーロッパ評議会
(European Council) が認定

5 年必要なFH 卒業資格が3 年で取れるのは制度的に問題が無いか聞いたところ、BA では夏休み等の長期休暇がないため実質的な授業時間はFH と同じであり、制度的に問題ないとのことでした。

BA の数名の学生になぜBA 進学を決めたか聞いたところ、いずれも次の順番でその動機を説明していました。
1. 職場と学校と双方で学べる
2. 3 年で卒業できる
3. 奨学金がもらえる

単に金銭的な利点でなく、職場と学校とのフィードバック効果に魅力を感じる学生が多かったのに少し驚きました。ある学生は「どのように働くのか知らないまま就職するのは大変不安だ。BA では職場に関しても十分学べるのでその心配が無いのが良い」と語っていました。

日本でも、大学にBAに近い機能を求めだしているようですので、BAは参考になるのではないでしょうか。

2011年1月 1日 (土)

アメリカのレスキューロボット開発事情と技術標準化(つれづれなるままに)

インターネットやGPS(Global Positioning System)という世界規模のイノベーションを達成したアメリカの技術開発政策には見習うべき点は多い。アメリカにおけるレスキューロボット開発では、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)が中心となりレスキューロボットの技術標準化を2005年から5年計画で実施されている。
技術標準の策定は次の3ステップを繰り返す事で進められている:
 1)レスキュー隊員等ユーザーが求める要求仕様を調査、
 2)要求仕様を技術標準に変換、
 3)技術標準の妥当性の検証。
この3ステップの実行にあたっては、最新の情報がユーザー、開発者、技術標準作成者間で適切に共有されるよう、ワークショップや技術標準評価訓練を実施している。また、技術標準に基づく評価を適切に実施するために、評価試験手段と評価試験施設も併せて開発している。私の参加したTEXAS にあるDisaster City(レスキュー隊員訓練施設)での
評価試験演習では、実大の災害現場が多数あり、標準化にかけるNISTの努力を垣間見る事ができた。作成された技術標準は順次、ASTMから発行されている。日本の場合、国の研究所や大学で様々なロボットが開発されているが、「ロボットの研究開発を持続的に向上させるための技術標準の策定」という研究は、ほとんどされていない。大学だと私ぐらいかな。国の研究では、ロボット作るのでなく、ロボットを作る環境を作って欲しいなぁ。やっぱ、アメリカすごいです。

 

ドイツの産学連携とGPS(つれづれなるままに)

ドイツの産学連携活動を調査しているとよく、GPS Gesellschaft für Produktionssysteme GmbH(http://www.gps-stuttgart.de/)という会社がプロジェクトに参加している。GPS(Global Positioning System)とは何も関係ないプロジェクトでも、GPS社が参加している。なんでかなぁ、と思って調べると、この会社はEUプロジェクト等大きなプロジェクトのマネジメントを請け負う会社で有ることが分かった。日本では、大きな国プロを取ると、1年の1/3は書類書きに取られ研究どころではなくなってしまうという、悲しい現実がある。GPSみたいな会社が日本であったら、書類書きの時間が減り、研究時間が確保できるのでは、と期待してしまう。ドイツの産学連携では、フラウンホッファー研究所の支部が専門ごとに、ドイツ全土の色々な大学の、それも敷地内にあり、人的交流も、学生の派遣も含め、非常に密に実施されており、多様な分野を研究開発をドイツ全土で実施している(産業ロボ系はシュツツガルト、知能ロボ系はボン、材料はダルムシュタット等)。日本の国研は関東(東京、筑波)に集中しており、地方大学の伝統に基づく特色ある研究成果を、国研がスムーズに引き継ぐ体制になっていない。国の一極集中体制の弊害が、こんなところにも出ています。明治維新後の日本の国のシステム作りは欧米のパクリであり、自ら汗を流して作り上げてきた欧米との深みの差が、こんなところにも出ています。日本あった産学連携体制を、是非、これから作りましょう。そして、アジア流の産学連携体制の基盤として発し出来ればと思っています。

官と民との研究開発投資の違い

2010年12月に発表された総合科学技術会議の第4期科学技術基本計画では、研究開発投資は、官+民で2020年にGNP比4%、官単独では1%をめざす、とされたようです。これまでは、官+民の話しかなく、「民の投資がふえたから、官は減らして良いでしょう」との官の言い訳にしたいのが見え見えで、おいおいおい、と思っていましたが、最後は官の割合が明示されたので、ちょっと安心です(でも、諸外国にくらべると、ずいぶん低いですが)。官を大学、民を企業と考え、私のいる工学分野で考えると、大学では10年以上先を見越して大きな研究テーマ設定をしています。H無限大制御では、大学での理論研究での10年、大学での基礎的応用研究での10年を経て、ようやく企業での本格的な応用研究がスタートしています。企業での研究開発は、通常1-3年で結果が求められ、5年を超えるようなテーマ設定は極めて少ないです。大学と企業の研究開発の役割、目的、やり方は全く違うものであり、「研究開発」との言葉でひとくくりにして考えてしまうところに、日本の科学技術行政の薄さを感じていました。基本計画では、産学連携研究開発のPDCAサイクルの確立や、テクノロジーアセスメントの話も出ていましたが、欧州では何十年も前に確立されたシステムを、日本では今からやらなければいけない(やらないよりは増したが)のに、後追い型の技術開発から脱却できていない日本の現状がかいま見えます。という私も、研究マネジメントがグローバル基準からではダメダメなので、「グローカル」な産学連携研究マネジメントシステムを、これから至急、つくります。今まで、暗黙知ばっかだったので、形式知化をめざします。