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2011年1月 9日 (日)

ドイツの職業教育

「ドイツ職人が作った**です」といわれると、何となく、良いものな気がしませんか? ドイツの職業教育は、世界的に見ても高い評価を受けており(例:UNESCO本部はパリだが、UNESCOの職業教育部門UNEVOCはボン)、その制度の一端を紹介します。調査したのは、2004年ぐらいなので、今としては情報が古いかもしれないので、注意してください。

ドイツの職業教育の基盤は「デュアルシステム」と言われる考え方で、これは、座学と実学をバランスよく実施するシステムです。ここでの実学は、日本で行われている単なる体験だけのインターンシップとことなり、実際の現場をじっくり学ぶ、本当の意味での実学です。

ドイツでは、ソーセージ職人など、手で稼ぐ分野で職を得ようとする若者は、高校時代にベルーフスシューレ(Berufsschule, 職業学校) に通う事になります。ベルーフスシューレでは、週のうち半分を実際の職場に行って技能の教育を受け、残りの半分をベルーフスシューレで関連知識の教育を受けることになります。ベルーフスシューレでは、座学だけでなく、実際に職場で用いる機器を利用して、より知識の理解を深めように工夫しています。私の訪問したベルーフスシューレでは、NC 工作機械
の他、簡単な生産ラインがあり、工場で働く若者が実際に物を作りながら、知識の習得に努めていました。

デュアルシステムで職場での教育に責任を持つのがマイスターです。ドイツにおいてマイスターの資格を有する技術者は、単に高度な技術を有していれば良いのではく、マイスターの資格を得るためには、次の3 つの段階を経て資格を習得していきます。1)レーリング(Lehring, 見習い)→ 2)ゲゼレ(Geselle、職人)→3) マイスター(Meister, 親方)。デュアルシステムでは、マイスターはレーリングをゲゼレにする教育に責任を持つ。マイスターになるためにはゲゼレの資格習得後、マイスターシューレ(Meisterschule, マイスター学校) に一定期間(2 年程度) 通い準備をして、マイスターの試験に受かる必要があります。ゲゼレは社会人ですから、マイスターシューレへは平日夜間や休日に通うことになり、時間的、精神的、費用的にも大変厳しいそうです。ドイツではマイスターの資格がないと店の責任者(店長) になれないため、店の跡継ぎとされる若者は、それこそ必死になってマイスターの資格習得に励むそうです。

マイスターの教育は次の4 つの柱からなります:1. 特殊技能、2. 経営、法律、3. 社会学、4. 教育手法。特に注目したいのは、教育手法の習得もマイスターの要件とされている点です。この点は、マイスターがドイツ社会で社会のリーダーとして高い尊敬を得ている一因にもなっているようです。日本の職業教育のインターンシップで、受け入れ企業に教育ノウハウがなく、学校と企業の連携が上手く行かなかった、との例を聞いた事がありますが、マイスター制度ではそのような問題点も、考慮しながらの制度設計となっています。ちなみに、どの程度マイスターの地位が高いかドイツの知人に聞いてみたところ「ドイツの高級車の顧客リストにはマイスターの名前がならんでいるが、あなたのような大学教官は、そのリストに入るのは難しいだろう。」との返答でした。

ドイツの新しい職業教育システムに、ベルーフスアカデミーというのがあります。ドイツの高等教育機関は、大学(Universitaet)と専門大学(Fachhochschule, FH と以下略記) があります。前者が博士養成まで担当するのに対し、後者は実務をより重視した内容となっています。その違いにより、専門大学卒業資格では、ドイツでは博士課程に入学はできないことになっています(EU統合で、このような区別はできなくなって、ちょっと困っていると聞いたけど、今はどうなんだろ)。この大学と専門大学に加え、近年、ベルーフスアカデミー(職業アカデミー、Berufsakademie、BA と略記)という新構想大学がバーデンビュルッテンベルグ州で開学されています。BA は次の特徴を持っています。
• 入学にはアビテュア(Abitur, ドイツ大学入学資格) と訓練企業との契約(学生が個別に交渉。企業リストはBA のホームページに掲載) が必要
• BA 在学中は訓練企業に雇用される形になり、協力企業から給料がもらえる。
• 訓練企業で3ヶ月働き、その後、BA にて3ヶ月の学習、を繰り返す。
• FH の卒業資格(通常5 年必要) と同等の資格を3 年で習得できる
また、その歴史は下記のようになっている。
• 1972 年: 民間企業と政府機関によりBA の構想がスタート
• 1974 年: BA 設立。60 の訓練企業の下で160 人が学生として入学。(現在は1400 の訓練企業と16000 人の学生)
• 1982 年: 同州で、BA の卒業資格は大学、FH と同じ扱いにする法律を制定。
• 1994 年: 同州の要請により、ドイツの資格審査機関” Deutscher Wissenschaftsrat”がBA を審査し、BA卒業生の能力はFH 卒業生と同等であるとの結果を公表。
• 1998: BA の卒業資格(Diplom(BA)) は、大学, FHで得た卒業資格と同等であるとヨーロッパ評議会
(European Council) が認定

5 年必要なFH 卒業資格が3 年で取れるのは制度的に問題が無いか聞いたところ、BA では夏休み等の長期休暇がないため実質的な授業時間はFH と同じであり、制度的に問題ないとのことでした。

BA の数名の学生になぜBA 進学を決めたか聞いたところ、いずれも次の順番でその動機を説明していました。
1. 職場と学校と双方で学べる
2. 3 年で卒業できる
3. 奨学金がもらえる

単に金銭的な利点でなく、職場と学校とのフィードバック効果に魅力を感じる学生が多かったのに少し驚きました。ある学生は「どのように働くのか知らないまま就職するのは大変不安だ。BA では職場に関しても十分学べるのでその心配が無いのが良い」と語っていました。

日本でも、大学にBAに近い機能を求めだしているようですので、BAは参考になるのではないでしょうか。

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